アンティークな扉に無垢の床、室内をあたたかに飾るハンドメイド風の雑貨たち。
こちらのお宅のオーガニックな屋内は、ガルバリウムの無機質な外観とは対照的です。
「外は倉庫みたいだけど中は木、というお気に入りのカフェがあって、
そういう感じもいいなと思っていたんです」とご主人。
カフェめぐりが好きだというご夫妻ならではの、おしゃれな家ができました。
また、スキップフロアにしたことで、リビングとダイニングの天井に高低差が生まれました。
これもまた、L字の配置とともに、両者の見えない仕切りとなっています。
その段差を利用した二つの小窓は、子供が喜ぶ楽しいオマケ。
「窓の向こうは寝室です。今朝も子供がここから〝おーいっ〟ってやっていました」
と奥様が笑うように、つながる空間を家族みんなで楽しんでいます。
布団で寝るため、寝室は畳にしました。
手前にはフローリングのウォークインクローゼット。
地窓を覗くと下にリビングが見えます。
こちらのお宅がユニークなのは、これほど開放感のある空間で、床の生活を送っていることです。
リビングには、ソファでなく座卓を置き、冬はコタツで過ごします。
「これまで築100年以上の実家で親と同居していました。和風の家にずっと住んでいたので、
私たちはこの方が落ち着くんです」とご主人。
寝室は畳敷きにして、布団で寝る習慣もそのままです。
ご家族は床座が基本のため、リビングには座卓を置く。
続く和室は、天井が低く、また垂れ壁があるため、茶室のような趣が出た。
「あえて閉塞感を出しました。リビングから見る和室の景色が気に入っています」とご主人。
サンルームを兼ねているため、広縁を設けた。
苦心したのは、空間の仕切り方です。家族の一体感が感じられるよう、壁ではな
く、部屋の配置や内装で分けることを考えました。
階段( 写真手前)を上りきると現れる2階の書斎は、まさにそんな工夫を凝らした場所。
「〝誰でも〟の、オープン書斎です」と奥様が言うこのスペースは、一見個室のようですが、
実は仕切り壁も何もないホールです。
スキップフロアの段差と、他とは異なる板張りの内装で別空間を演出しました。
ご主人自ら塗装したパイン材の板壁も、個室感を出すのに一役買っています。
キャビネットのマスタード色をもとに、同系統のガラスタイルでカラーコーディネートしたキッチン。
格子ドアの向こうは土間付きの食品庫。ご両親が裏の畑でつくった泥付きの野菜などを保管する。
レトロな照明と、6つの小窓から漏れるダイニングの光にほっとする玄関。収納は、1人に1ボックスを割り当てた。
陶器製タイルをあしらった洗面台やニッチの棚など、水栓と洗面ボウル以外はすべて大工さんの手づくりによる洗面脱衣室。
木目調でテイストを合わせたバスルームも美しい。
新居は、旧家の敷地の一角に構えました。親から土地を譲り受ける際、
庭木をなるべく残してほしいという要望があり、日よけや道からの目隠しになるよう、
窓との位置を考えて移植しました。「窓から見える緑がいいんです。あれは梅の木。
花が咲くときれいですよ」。
愛着のあるもの、愛着のある暮らしを大切にする心が、温もりのある家をつくっています。